戦争には意味のある戦争と意味の小さい戦争がある。それは全てが終わった後に振り返れば、その地域の戦争が、全体にどれだけ貢献していたかわかるのだ。
しかし現地の兵たちはそうではない。そこで命を捨て、健康を捨て、正気を捨てて、戦闘しているのだ。
これは歴史的な経緯を明らかにするものでもなんでもない。死んでいった同胞たちの人生を語り継ぐための物語である。
話は訓練時代から始まる。ユージンはまだ10代で大学一回だったが、親の反対を押し切って、海軍入団。
国のために尽くすためだ。
最初は2ヶ月間の訓練。とにかく厳しい。朝は4時、夜は10時にねる。寝ている途中で、放送がなり10分後に宿舎を移動するという。そして、移動して寝るとまたすぐに放送がなり移動する。
しかしこのような訓練がのちに命を救うことになった。なぜなら、戦争では常に敵の気配に気を配り移動しながら寝る必要があるからだ。
その後、ある島に行き、予行訓練を行った。
柔道?の先生のところでは漫画みたいなエピソードがある。ユージンを指名し、私を銃剣で刺してこいという。
ユージンは昔教官を指して罰を受けた訓練兵の話を思い出し本気で挑めなかった。
本気で来いとそれでも言うので、証人もいるしと言うことで腹を決めて、剣術で突進。しかし、気づいたら地面に抑えられていた。
全員の生徒がそれを行ったが、全員、素手の先生に抑えられていた。
ペリリュー島に上陸する。
ペリリュー島にはすでに日本兵がいる。この戦争はとてつもない死傷者をだし、極限の過酷さだったにも関わらず、必要なかった戦争だと言われることの多い戦いだ。
地面は珊瑚礁。気温は46度である。
上陸したら、早く前進しなければならない。日本兵はここぞとばかりに銃撃してくるからだ。
ユージンは動悸が止まらず、プルプルしていたが、号令ともに、前進しとりあえず生き延びた。
しかし補給隊の車が狙われ、補給がなかなか届かない。
みな水分不足で死にそうだった。
井戸があるぞ!
そんな声を聞き向かうと白く白濁した水があった。
珊瑚の粉が積もっているのだ。
なにふりかまわず仲間たちが飲んでいる。ユージン飲もうとした時、隣の仲間が倒れた。
飲むな!毒がはいっているかもしれないぞ!
そんな声が聞こえきた。仲間は後方に運ばれ、のちに回復したが、毒だったのか汚染されていたのかはわからない。
やった届いた補給隊の水。コップに入れるとなんと茶色だった。構わず飲むと、戻しそうになるほど臭い。錆と油がひどい。改めてコップを見ると、青い油が浮いていた。
しかし水分不足で死ぬか、飲み干すかだということで、胃がキリキリ痛みながらも飲み干した。
日本兵は追い詰められるとバンザイ攻撃をしてくると言う話を聞いていた。捨て身の攻撃である。しかしそれが届くことは一度もなかったという。
今回もそうかと思いきや、日本はバンザイ攻撃を禁止していた。後方から網のように洞窟や堀に拠点をいくつもつくり、すばやく情報が伝わるようしていた。
完璧な準備をしていたのだ。
このようになっていたことをアメリカ兵が知るはずもなく、それも熾烈を極めた原因である。
また日本兵は夜襲が得意だ。
夜は日本兵に備えなければならず、二人一組になって、片方が寝ている間は片方が見張りをした。
ユージンはその後、身を隠すところが一切なく、銃が飛びまくっているところを横断することなった。
ペリリュー戦、沖縄戦の中でももっとも恐怖を感じ死ぬまで忘れられないことになった体験の一つである。
そんな中でユージンは気づく。古参兵に共通するどこか、虚で達観した顔をする瞬間は、この無気力感によるものなのだと。
使い捨ての如く命が失われていく。自分ではどうにもできず、全てが運命で決まっていく感覚になる(実際そう)。
実際に味わったものにしかわからない、とてつもない虚無感があるのだ。
戦地にいる兵士たちは極端な運命論者に皆なると言うがそれも無理はないだろう。
戦地には衛生兵がいる。彼らは尊敬を込めてドクと呼ばれていた。
なぜ尊敬を集めていたか。そのエピソードを話す。
一人の戦士が腕を撃たれた。ユージンは横にいてその撃たれた腕と触れていたと言う。
どく!
ユージンが呼ぶ。
毒がすぐやってきて、応急処置を始める。仲間もやってきた。
仲間が応急処置をしやすいようにナイフを取り出し、背負っていた荷物のストラッパーをザクザクと切り始めた。
切れ味の良いナイフは順調に切っていき、勢い余って応急処置をしていたドクの顔面を刺してしまう。
骨まで達するほど深い傷だ。
ドクはナイフの衝撃と痛みに一瞬のけぞった。鼻の左からは血がドロドロと流れている。
しかしすぐに何事もなかったかのように腕の治療を始めた。
しくった仲間は自分を罵っている。
ユージン(スレッジハンマー)が何か手伝えることはあるか?ときくと、顔の出血を抑えてくれと言う。
ドクはその後後方にさがり、治療を受け数時間で、戦線に復帰した。
我が身を顧みず、治療に全力を尽くす。
兵士が衛生兵を心から尊敬していたのも納得である。
もう一つ書くべきことは不潔さである。
戦争はとてつもなく不潔だ。
まず常に強烈で吐き気を催す死臭が漂っている。
風が吹いても隣の死臭がこちらにくるだけだ。
また死体は時間が立つもすぐに膨張しだし、腐っていく。
そこにはうじ虫や羽が沢山わく。
またペリリュー島は基本珊瑚礁である。
土がない。そのためクソをしてもそれを土で埋められない。
何千人と言う兵士が小さな島で、クソを30日間続け、何千人の死体が放置されれば、想像しうる限りの不潔さがあるのがわかるだろう。
例えば飛びまくってるハエなんかは超でかい。なかには、肥えすぎて飛ぶことができなくなってるハエもいる。
また、倫理観も無くなっていく。
アメリカ兵は日本兵の死体を手際よく漁り銀歯や金目のものを持っていく。
こんなことはもちろん、良しとされるわけはないが、むごたらしい死と恐怖、緊張、疲労、不潔さ。そんな野蛮な状況で生きるために戦っていれば良識ある人間も信じられないほど残忍な行動を取れる様になる。
「ペリリュー島という地獄の深淵で、生き延びるための激戦を続けていると、文明という薄皮が朽ち果てて、誰もが野蛮人になる。」
民間人や非戦闘員には理解できない状況に生きているのだ。
ある時アメリカ兵の死体を見た。日本兵によるものである。
それを見た瞬間からスレッジハンマーは日本人に対して一切の同情を今まで持つことは無くなったと言う。
それは二体の死体。体がバラバラに切り刻まれ、縦に積まれている。そして、顔にある口には男根が詰められている。
怪我をした人間は祖国に帰るが、大隊にもどってきたがるという。
その理由は、大隊の家族よりも深い結束感から離れたことによる満たされなさ。
もう一つは、戦争を経験した人間と、民間人との間にあるギャップに苦しむからだ。
実際に、復帰を志願した人もいるという。また、帰国して良いとなっても大隊に残った人間もいる。
感想
傷を負っても動じずに治療を続けた衛生兵について。
人間の信念の凄さを感じた。
だって普通の反応じゃない。普通は傷を負えば、痛みが走りそれを避ける様になっている。
しかし全く動うじずに治療をする衛生兵は、治療の優先順位を自分よりも上にしていたのだ。
人間じゃない生物ならできないことではないか。
一般人目線で言うと、顔に深い傷負わされるとか、めちゃくちゃ嫌だ。
だって顔だ。ニキビできたから人に会いたくないとかのレベルじゃない。
生き残った後のこととか色々考えてしまいそうやけど、そんなマインドではないんだな。
国、仲間を自分よりも上に置いている。
強固な集団主義を持っているのだ。
文明という薄皮が朽ち果てて、誰もが野蛮人になるについて。
これ読んでわかった。戦争にいる人を、戦争を経験してない人の価値観で捌くことはできないということ。
戦争はまさに野蛮人にならざるおえない行為であり、罰するべきは戦争を起こした人間である。
大隊に戻りたがる話について。その理由について、民間人に理解されないからと書いてあったが、メンタル疾患とも似ていると思った。
昔は人間を、メンタル疾患の経験がある人とない人で見ていた。
というかない人には理解されないので、心の内を開けた付き合いはできなかったのだから、自然と二分するみたかになる。
これが戦争となればもっとなんだろうな。
また大隊の絆というのは、部活とかに近いんだろう。
一緒に困難を乗り越えることで、他の人間とは違う一体感が生まれるのはよくわかる。
これも戦争となれば、命を預けあった仲であって、比にならないほど一体感が生まれているんだろう。
戦争は完全に人間のキャパシティを超えてるなぁ。
結論、戦争とは人間を野蛮人にする行為である。
語彙
・前門の虎後門の狼、、八方塞がり的な