ダニエル・キイスとは『アルジャーノンに花束を』の作者である。
内容は解離性障害、つまり多重人格の女性が精神科医とともに人格を統合していく物語である。
人格は主人公のサリー以外に四人。
デリー:記録係。唯一、どの人格が出ていても記憶や感覚を失わずにいられる。他の人格とコミュニケーション取れるのもデリーのみ。他の解離性障害の事例をみても、記録係がいることが多い
ノラ:知的で教養があり、芸術が好き
ジンクス:凶暴な人。暴力をされたり、性行為をするときになるとでてきて、相手をボコってしまう。全ての男を憎んでいる
ベラ:舞台で踊ったり、表現し、注目されるのが大好きかつ得意な人
サリーは頭痛がする人格が変わる。どんな生活を送っていたかというと
・突然、24時間が経過して違う場所に立っている
・いつも知らないうちにクレジットカードの支払が来ている。
・買った記憶のない服や本、バイブなどが家にある
・知らない人から、自分が暴力で子供を傷つけたり、ダンスで夜通し踊っていたという話を聞かされる
こんな感じなので、仕事も長続きせず、結婚も破綻し、自殺未遂を5回?している。
自分の時間が突如奪われ、何もかも自分の思い通りにいかない生活。多重人格の苦しみがわかる小説だった。
特に印象に残ったのは3点。
一つはサリーにノラという知的な人格が統合されたときの、医者の反応だ。医者はロジャーという。ノラが統合されたとき、それまで子どもに話しかけるような態度だったロジャーが、最も本人の心地よいのであろう喋り方に変わり、サリーに好意を持つようになった。
この変化に記録者でどの人格のときも見ているデリーが気づいた。
これを読んで人は無意識のうちに相手の知的レベル(教養とか)を見極め、話のレベルを変えているのだと思った。そして知的レベルが近い人に親しみを感じ、好意を感じやすいのだと。
実際、私も本を読んでいる人間と、本を読んでいない人間でできる話しが違うと感じていた。
これは実際的にはさまざま使える学びである。
たとえば
・知的レベルを上げておけば、それ以下に合わせられるので、好意が得られやすい
・学歴や読書量をきくことで、その人との距離の指標になる
もう一点はすべての人格の統合が終わった後に医者のロジャーがサリーにいいたこと。ペンをさしだしながら「自分のためにそのことを書き留めなさい。自分の生活を、ある距離をおいて客観的に見るようにしなさい」といった。
良いフィーフォバックをするには、客観視する力が必要である。
たとえば他人が悩みを聞いていると「こうすればいいだけやん」「こうするしかないやろ」と思う。しかし自分のこととなると、自分にズバリというアドバイスができないのだ。これは自分を他人のように見れていないからである。
これはビジネス書でも言われていることで、紙に悩みを書き時間をおいてから、「他人に相談を受けたように」回答するといいとい情報を読んだ記憶がある。
普段から言語化してFBは行っている。あとは「他人のようにみる」ことを「意識」しながらやってみよう。
最後の一点は四つの人格を統合したばからりのサリーの感情だ。
「アパートの部屋にもどると、さあらこれからは毎日ひとりの人間としてすべての時間が自分のものになるのだ、という喜びがどっとあふれた。これこそが、ほんものの人間、完全にひとりの人間が、幸福と呼ぶものなのだろう。」
時間を自分の思い通りに使える。本を読んでもいいし、ジムに行ってもいいし、映画を見ていいし、旅行にいってもいいし、踊ってもいいし、歌ってもいい。
自分の時間がコントロールできることへの喜びはわたしにも確かにあるのだ。今から1ヶ月何してもいいですよ、と言われればウキウキしてくる。しかしわたしの現実は常に何してもいいですよ状態なのだ。
人権が守られるようになったのはここ100年足らずである。
自分の人生を好きなように使える喜び、感謝をして生きていこう。