‐作品について
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、村上春樹の13作目の長編小説です
名前が、ながくて覚えにくいですが、内容ははげしかったです
それでは以下、僕の感想です。センター評論みたいになってしまいました
‐感想
これは、多崎つくるが完璧な組み合わせだった五人組から突如、追放されたわけを15年ぶりに、探していくという流れにある。この小説を読んだ1番の感想は、今までにない感情が波のように押し寄せてくるということだ。たのしい、悲しいのように単純な言葉では表せない。それは、普段は隠れていて、時おり、死を目の前にした時に感じたりする虚しさに近い。取り返しのつかない時間のやるせなさに(大学受験を1点で落ちた時のやるせなさの究極)心臓を軽く握られているかのようになり、鼓動が早くなって、時おり休憩が必要だった。
15年も経っているのだ。15年たって、それはある種の誤解(起こるべくして起こったのか)だったとわかっても、その時間はもう戻らない。時間は可能性の喪失なのだ。ハイデッカーは人間は死に面した動物であると言ったが、普通の人間は時間の有限性を日常的には意識しない。このように小説を読んだり、大学受験で失敗した時に、あの時こうしていれば?と時間は戻らないのだと強烈に感じるわけだ。
村上春樹の中には世の中で起こることやあなたがしたことは全て巨大樹の根っこのようにつながっていて、すべての人々がお互いに影響し合っているという考え方が見られる。彼の小説を読むと全ての成り行きは必然なので受け入れるのが自然なのだろうという気持ちにさせられる。心の許容範囲を2.5倍に押し広げてくれるのだ。
彼の小説は自ら語るように、読者にある程度の咀嚼力=読解力を要するのだ。最初は物語の幹の部分だけを楽しんでいたけれど、今は、葉の形や色を見ることもできるようになってきたと感じる。
3度のづれが100m先では大きなずれとなるように、人生は何気ない日常の積み重ねの上に成り立っていると強く感じた
。
自己啓発本で言われるより、100倍心にしみわたり、まるで人生を一度経験したかのようだった。小説とはまさに経験なのだ。
‐あとがき
村上春樹さんは、普遍的な命題を扱っているので、世界的に読まれるのだとテレビで見たことがあります。
今回でいえば「時間」「死」とかですかね
では。