一日/西村賢太の感想・レビュー

西村賢太の随筆である。

最後の90ページくらいは色欲譚と題し、エロい話が書いてある。と言っても、興奮するエロい話とかじゃなくて、売淫した話から派生して、自分の異常な発汗量の話とかだ。

内容

芥川賞を受賞したわけだが、受賞候補に選ばれたとき本人は諦観だった。理由は私小説であるからと、過去二回候補になったものと同様に藤澤清造への想いを練り込んでいるからだ。

しかし西村賢太が大好きな私小説家たちを考えると、批判に晒されながらもブレずにやってきた者たちが、結局評価されている。

私小説かは、そのよう批判に耐えうるしつこさが大事なのだ。

実際、芥川賞を取れたのもしつこさのおかげといえる。

過去2回ノミネートされていたが、2回目では前回と全く内容が同じという理由で落とされた。

しかし今回も内容は変わらない。私小説というきつい制限の中での表現である。

ではなぜ受賞できたかというと、文学の多様性を示すためらしい。

しつこさの勝ちである。

色欲譚を読み終わり、初めから読み進めてみると、この本はさまざまな媒体で発表された文章を寄せ集めた形であることがわかった。

それは北海道新聞に載せられたものから新潮に載せられたもの、著作の解説に至るまであらゆるものである。

芥川賞を取った時の話なんかは5つくらい文章が載っていて内容も大差ないが、普通に面白かった。

・西村賢太の田中英光の論評。
「文章がべらぼうに下手だが、面白すぎる。私小説を書く上で私的な文章や小洒落た言い回し、妙な感覚的描写などは一切無用であることを学んだ。」

・西村賢太の本の読み方は狭く深くだ。まず、本を集める。初版とかそういうやつ。んで、次は肉筆を集める。一つ20万とかしても買う。そして、親戚とかまでたずねる。そんで墓の掃除を勝手に習慣にする。ついにはお墓まで持ち帰る。20代の頃は田中英光、30代は藤澤清造にどっぷりだったそうな。

・私小説と日記の違い。それがわかったぞ。それは人に読ませるために書いたかどうかだ。つまり客観性の有無だな。

感想

なぜエッセイを読み始めたかというと、西村賢太のいわゆる秋恵ものに飽きを感じたからだ。

たった一年間の同棲生活を何冊にも渡って、何度も書いているからな。

エッセイもいいね。というかこの人の本の魅力は、気合を入れずに読めることだと思う。

壮大な物語や、運命的な出会いや、大きな教訓や、文学的比喩がない。まったく脂肪のない、超筋肉質な文章のみって感じなのだ。

さらに主人公はいつも北町貫多である。つまり設定理解がいらないのも読みやすさに貢献している。

俺は映画を見るのがだるい。その理由は壮大な物語がそこにあるからだ。あと最初の状況説明的な時間がだるいからだ。

だから戦争系とかの内容あんまりない映画のほうが好きだ。

話は変わるが、過去にも私小説で芥川賞を取った人がいたんやな。西村賢太が初めてかと思っていた。

語彙

向こう張る、、対抗する

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