98点
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楢崎(ならざき)は会社をやめ、不安や自暴自棄を抱えてる。そして社会に戻りたいとも考えていない。
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なぜか立花涼子は性行為をしようとすると身体をこわばらせた。それとは対象的に教団Xの描写では性行為ばかり描かれる。
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同じ章のなかで視点が変わるのが特徴的だ。謎解きのような感覚もある。誰の視点だとうと思いながら読み解いていくことになる。
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峰野の妊娠相手が高原で、高原は沢渡とともに詐欺を働いた人物である。高原はリナ(立花涼子)が彼女である。
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よくこんなにメンヘラの思考がわかるなと思う。くまさんを思い出してもそうだが、時にメンヘラはすごい思考回路をしている。鬱陶しがられても、自分のことを見てくれるほうがいいとか。中村文則すごい。
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高原と立花は兄弟(親が再婚)だった。そして、沢渡と〜は同じ師匠を持つもの同士だった。
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性行為の描写結構興奮するな。論理的思考の外にあるみたいな話は宮台真司のと近いかな。
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「私達は私達が死ぬことを明確に認識する唯一の存在」
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沢渡は自分が救った女性を犯すことに喜びを感じる男だった。しかしただの嫌なやつではなく、人を救う時や喜びもしっかり認識していた。ただ、前者の方が大きな喜びを感じることを、自分の感情の動きを観察することで見つけていたのだ。人を傷つける喜びと、救う喜びをフラットにみる姿勢は世間の善悪の基準を盲信せず、自分の頭で考えているようにみえる。むしろ疑うことをせずに、ただ常識に従う姿勢は、ナチスのもとに生まれた子どもたちがユダヤ人をゴキブリと同等にみなすのと同じに思える。しかし社会とはとはこのようなルール疑うことをしない人間が大半ではないと成り立たないのではないかと思った。
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中村文則さんなら、「大変だったねぇ」と共感してくれるとおもう。たとえ、特異な苦悩でなくても。たとえば俺のように恵まれた家に生まれた、ただの臆病ものに対しても、俺の苦労を深いレベルで理解してくれるとおもう。だってこんな小説を書けるんだから。「全ての多様性を愛する」。それはすべての人間に想像力を働かせようとする姿勢のことだ。その人がどんなことで悩み、どんな夜を過ごしてきたのか、両親のような気持ちで受け入れることだ。まるで自分は一人ではなく、自分のことを理解してくれる人間がいたように感じて、涙が止まらなくなった。大学の図書館だったがわ涙がボロボロと止まらないので、トイレに駆け込んだ。
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小説の力を久々に実感した。「世界の誰も俺のことに注目していなくて、誰も俺の苦しみをわかってくれない」。そんな世界から弾かれたと感じている”孤独”な人の救いになってくれる。これは娯楽とかそんなレベルではなく、救済活動。医者ががんの手術をして患者を救うのと同じくらいすごいことなのだ。
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俺も誰かを救いたい。世界に弾かれていると感じている人たちを。そんな人に価値提供したい