奴隷にされたソフィー/ソフィー・ヘイズの感想・レビュー

これは貧困でもなんでもない女性が、人身売買され、路上で体を売るという強制労働させられた6ヶ月間の話。ノンフィクションである。

内容をまとめる。まず、主人公はソフィーだ。

Sophie Hayes

彼女は普通の18歳?だった。父親が暴力的で完全なクレイジー男だったにせよ、母親からは愛されていた。

そんなソフィーがよく言っていたクラブで、カスという高身長の誠実なイケメンと出会う。

初めカスはこちらに視線を送り、何度かアプローチをかけてきたが、ソフィーは全く相手にしなかった。

しかし鉄壁を貼られているにもかかわらず、カスは誠実なアプローチをする。そこには強引さは全くない。

ただ話がしたいだけなんだ。チャンスさせくれないのかい?

的な感じである。結局、メールをするようになり、電話をするようになり、いつしかなんでも話せる心を許せる親友になっていた。

恋人との悩みがあれば、カスに話すようになるのだ。世間ではなんでも話せる人を一人は持ちなさい、と言われるが、ソフィーにとってはそれがカスだった。

それから5.6年経った。カスは仕事が何かイタリアに引っ越していたが、それでもやりとりは続いていた。

ソフィーは結婚を考えた相手がいたが、結局結婚しない選択をした。心が憔悴していたところ、カスがイタリアにおいでよ、君には休暇が必要だと言った。

それでソフィーは行くことにした。

最初の数日は楽しく過ごした。そしてセックスもした。次の日晩になるとカスは別人になっていた。

以下引用。

カスの口振りが突然変わった。私のほうをほとんど見ようともせず、それまで一度も聞いたことがない険しい口調で話し出した。
「そうだ、俺はずっとおまえの支えになってきた。だから、こんどはこっちが恩返しをしてもらう番だ」
「おまえがイギリスでやってるようなチンケな仕事で稼いでもらおうなんて思っちゃいない」
カスは見下すように冷たくせせら笑った。
「ここで稼ぐんだ。仕事場は俺が見つけてやる──道端にな」

カスは薬の売人だったが、ヘマをして借金を抱えていると言う。

それを手伝えと言うのだ。前日に感じの良いカスの友達とお酒を飲んだのだが、実はそれもソフィーの価値を見定めてもらうための会だったらしい。

そこからは暴力により、強制労働をさせられる。

少しでも泣き言を言うと、殴られる。

てめえは立場がわかってねえようだなぁ?ヤルやらないじゃねえ。お前はやるしかねえんだよ。

お前が生きてた世界じゃ泣き言いうにしたって、せいぜいパパが愛してくれないのってぐらいだろ?

だなら辛い人生だとでも思ってんのか?本当に辛い人生がどんなものか、おまえにゃわかりゃしない。それしか方法がないから、そうするしかないって世界で生きてる人間もいるんだ。

その日から路上に立たされる。ひたすら暴力させられながら、何度も覚えるべき大量の知識を反復させられる。覚えていなないと殴られる。

どんな仕事かと言うと、ミニスカ、ハイブーツ、ドレスを着て、化粧をする。

そして夜の路上に立つ。車が止まったら、何円よという。OKされたら、相手の車に乗り指定の場所に行き、車の中でやる。そして、元の場所に戻してもらう。

これを一晩に30人ほどやる。相手が何人かを見極める必要がある。

なぜなら、ー人だとレイプされて殺されて道端に捨てられる可能性があるからだ。

そして警察にも注意する。

家に帰ればカスに金をわたす。カスは金を数える。少なければ

なめてんのか?!

とフルボッコである。頭を掴まれ、壁に何度もぶつけられるのだ。

そしてカスはとにかく理不尽である。そこに一貫性なんてない。突発的にブチギレるので、一度も起こることを予想できたことがなかった。

その結果、常にカスの顔色をうかがい、極度の緊張状態であった。

何かを指示された時は、気が気じゃない。カスに見られていると失敗しないようにと何度も確認してしまう。そして必ずやらかす。

次の引用はパスタを作れと言われたが、そのソースが濃かったときの話である。

皿は私の横の壁にガチャンと当たり割れた陶磁器のかけらとパスタと濃厚なソースがそこらじゅうに飛び散った。(中略)泣きながら両手で頭を抱えている私に、カスは大股で近づいてきていきなり髪をつかんだ。完全に理性を失った顔だった。激しい癇癪の発作を起こした乱暴な大きな子供みたいに、殴る蹴るの見境ない暴行が始まった。喉を力いっぱいつかまれて壁に押しつけられたときには、このまま絞殺されると思ったが、カスは私の頭をタイルに叩きつけ、「このあま、どこまでバカなんだよ?」と私の鼻先で声を張り上げた。(中略)カスは私の首をつかんで床から持ち上げ、そのまま足元に投げ落として、また蹴り始めた。「お前がちゃんと掃除しろよ、このくそったれが!」そして、私の顔を床に押しつけて髪でタイルの汚れを拭いたあげくに、体を引っぱり上げて立たせ、「なんだよ、その汚ったねぇ髪は?てめえには自尊心ってもんがないのかよ?」と罵った

ソフィーは常に風邪をひき体調不良であった。飯が腹を通らない。3口以上食べたら、すべて吐いてしまう。そんな状態で一晩中働かされるから体重は40キロまで落ち、ゾンビのような見た目になっていた。

なぜ逃げなかったのか。一つは逃げたりなんかしたら、てめえの家族全員やっちまうからなと言われていたこと。そしてカスなら本当にやると確信できたこと。

もう一つは全ての持ち物はとられており、常に監視されていたこと。とにかく逐一連絡、親にもカスの前で電話をさせられて、安心よって言わされてたのだ。

もう一つは客の中にはおれの連れもいる。逃げようなんか思うんじゃねえぞ?と言われていたこと。本当にいないとしても、カスの仲間が紛れ込んでると思っただけで、助けを求められない。だってこの親切な客こそがカスがよこした仲間かも知れないから。こんな感じで誰も信用するなという洗脳をされていた。

結局、体調が悪くなりすぎた。病院には行くなと言われていたが、このまま行ってもどうせ死ぬと悟り病院に勝手に行った。

結局そこから、親が駆けつけてギリギリのところで抜け出せた。

イギリスに帰ってからも、後ろからトントンと肩を叩かれて振り返ってみたらカスがいるなど、ホラーな展開があるが結局、カスは捕まった。

ソフィーは体にも心にも後遺症があるが、そのエピソードを人につたえることで、役に立たせている。

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印象に残ったのはカスの巧妙さ。だって5.6年間にわたって、やりとりして何でも話せた人に裏切らられるって、避けられへんすぎやろ。

しかも最初から狙ってたのだから、すごい。俺で言えばテラクに裏切られて、強制労働させられるみたいなもんや。

もう一つはソフィーが普通の人ってこと。貧困でもなければ、発展途上国でもない。

そのような治安が悪い国でしか人身取引が行われないと思っているのは、間違いだと学んだ。

少しでも怪しいと思ったら警察にいこう。間違いでも警察は文句は言わない。

つれてこられたコミニュティでな男と一緒にアパートに引っ越してきた外国人女性が、いつも浮かない顔をしていたり、ありえへん時間に家を出入りしていることがおおい。

つれて行かれた時は突然仕事に来なくなり、友達にも誰にも連絡せずのときだ。

こんな時は警察へ。

世界で強制労働させられてる人は1230万人。その利益は主要グローバル企業に匹敵するっていう事実も覚えておきたい。

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